ハラスメントという言葉が広く知られるきっかけのひとつに、1970年代に
アメリカで「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」という性的嫌がらせを
意味する造語が誕生したことがあげられます。
日本では1985年に男女雇用機会均等法が施行され、1989年には「セクシュアル
ハラスメント」が流行語大賞を受賞し、社会的な関心が高まりました。
その後、同法は段階的に改正され、セクシュアルハラスメント防止への取り組みが
強化されてきました。
- 1997年改正:女性労働者を対象に、事業主にセクシュアルハラスメント防止の
「配慮義務」を課す - 2006年改正:対象を男女労働者に拡大し、事業主に「措置義務」を課す
- 2014年改正:同性同士のセクシュアルハラスメントも対象に含める
- 2017年改正:被害を受けた人の性的指向や性自認にかかわらずセクシュアル
ハラスメントの対象とする
このように、法改正を重ねるごとに対象範囲が広がり、セクシュアルハラスメント
防止の取り組みは時代に合わせてアップデートされてきました。
*2025年6月:求職者等に対するセクハラ対策を義務化する改正法が成立し、
公布から1年6か月以内に施行されることになりました。
「セクシュアルハラスメント」の定義
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該
労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該
労働者の就業環境が害されること
男女雇用機会均等法第11条より
①「性的な言動」を行うものは、事業主、上司、同僚に限らず、取引先の他の事業主また
はその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒等もなり得る
②男女とも行為者にも被害者にもなり得る
③異性に対するものだけでなく、同性に対するものも該当する
④性的指向(どんな人が好きか)性自認(自身の性別をどのように考えるか)にかかわら
ず該当する
職場とは
・労働者が業務を遂行する場所
・業務で使用する車中や会社の飲み会も含まれることがある
労働者とは
・雇用形態にかかわらず事業主が雇用する全ての労働者 (派遣も含む)
労働者の就業環境が害される行為とは
・当該言動により、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、
就業環境が不快なものとなったため能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、
労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること
セクシュアルハラスメントは地位の上下、男女にかかわらず行為者となり得ます
🟩 セクシュアルハラスメントの具体例
性的な発言(例)
・性的な事実関係を尋ねること
・性的な内容の情報(噂)の流布
・性的な冗談やからかい
・食事やデートなどへの執拗な誘い
・個人的な性的体験を話す など
性的な行動(例)
・性的な関係の強要
・身体への不必要な接触
・わいせつ図画の配布、掲示
・強制わいせつ行為 など
🟩 セクシュアルハラスメントの判断基準とは
就業環境が害されていると一般的に判断できる例
・意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被った場合(1回でも該当)
・明確に抗議しているのにもかかわらず放置された場合(継続または反復が要件)
・心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合(継続または反復が要件)
セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を
考慮する必要があります。
「労働者の意に反する性的な言動」や「就業環境を害される」の判断に当たって
は、労働者の主観を重視しつつも、客観性が必要です。
また、男女の認識の違いのより生じている面があることを考慮すると
・被害を受けた労働者が女性である場合⇒「平均的な女性労働者の感じ方」を基準
・被害を受けた労働者が男性である場合⇒「平均的な男性労働者の感じ方」を基準
とすることが適当です。
セクシュアルハラスメント防止は事業主の義務です
(労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児・介護休業法)
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
② 相談に対応する体制づくりとその周知
③ 事後の迅速かつ適切な対応
④ ハラスメントの原因や背景となる要因の解消
⑤ 当事者のプライバシー保護とその周知
⑥ 相談者や協力者に対する不利益な取り扱いの排除
⑦ 他の事業主が実施する雇用管理上の措置に対する協力
⑧ 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を
解消するための措置
セクシュアルハラスメントでは、世代間の意識差から加害者が「昔からのこと
だから」と軽視し、被害者が「これくらい我慢すべき」と受け止めてしまうことで
問題が表面化せず職場環境を悪化させ続けることがあります。
性的な言動は相手の尊厳を傷つけ、労働環境に深刻な影響を及ぼします。
ハラスメントかどうかは一方の話だけでは判断できません。
また当事者同士の話し合いでの解決はできず、むしろ悪化させる場合もあります。
ハラスメントが発生してしまった場合、対応に多くの時間やコストがかかります。
そのため、ハラスメント防止コンサルタント®などの専門家による研修や個別面談を
導入し、未然に防ぐ取り組みが重要です。
事前の対策によって誰もが安心して働ける職場環境が整い、すべての人の力を引き出す
ことで、組織の成長にもつながります。
企業として計画的かつ継続的に取り組むことが、事業主の義務とされています。