「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉をよく耳にするようになりました。
企業や働く人にとって深刻な問題であるにもかかわらず、その定義や対応はまだ十分に理解されていないケースも多いのが現状です。
2025年6月、労働施策総合推進法の改定によりカスタマーハラスメントも事業主の義務となることが参議院本会議で可決・成立しました。
これにより、企業はこれまで以上に具体的な対策や取り組みが求められるようになります。
「カスタマーハラスメント」の定義
職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(顧客等言動)により当該労働者の就業環境が害されること
労働施策総合推進法33条(改定)
①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
③労働者の就業環境を害すること。
の3要素をいずれも満たすものであること
🟩 カスタマーハラスメントの具体例
- 長時間にわたる過剰なクレーム対応を強要する
- 人格を否定する暴言や威圧的な言動を繰り返す
- サービスの範囲を超える不当な要求を突きつける
- 脅迫的な言葉や行為で従業員を従わせようとする
こうした行為は従業員の心身を疲弊させ、結果的に離職やメンタル不調、企業の信頼失墜につながりかねません。
🟩 判断基準
カスタマーハラスメントかどうかを判断するには、次の点が重要です。
- 一般的に見て、従業員の就業環境を害しているか
- 不当な要求や暴言が継続・反復されているか
- 従業員が強い精神的苦痛を受け、能力発揮に重大な影響を与えているか
従業員の主観を重視しつつも、客観的な基準での判断が必要です。
カスタマーハラスメント防止の義務
(労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法)
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
② 相談に対応する体制づくりとその周知
③ 事後の迅速かつ適切な対応
④ ハラスメントの原因や背景となる要因の解消
⑤ 当事者のプライバシー保護とその周知
⑥ 相談者や協力者に対する不利益な取り扱いの排除
⑦ 他の事業主が実施する雇用管理上の措置に対する協力
カスタマーハラスメント防止は企業の義務です。
これを怠ると、従業員は「守られていない」と感じて心身に不調をきたし、離職やモチベーション低下につながります。
負担が一部に集中すれば職場全体の雰囲気も悪化し、経営への不信感を生みます。
さらに、労働施策総合推進法などに定められた措置義務を果たさなければ法的リスクを負う可能性があり、告発やSNSでの拡散によって社会的信用を失うこともあります。
その結果、健全なお客様への対応力も落ち、顧客満足度の低下に直結します。
つまり、カスタマーハラスメント防止は単なる「クレーム対応」ではなく、経営課題であり、法的責任を伴うテーマです。
計画的かつ継続的に取り組むことこそが、従業員の安心と組織の信頼を守る第一歩となります。。